楢岡焼をご存じでしょうか。江戸末期から続く秋田の伝統工芸品で、マグカップやお茶碗等の食器でご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
艶のある、他では見ることのない独特で美しい青色が特徴の焼き物です。
老若男女問わず、その風合いに魅了されている陶芸ファンも多いかと思います。
今回はそんな楢岡焼の歴史や特徴などについて解説いたします。
具体的には、
・楢岡焼の歴史
・楢岡焼の特徴
・楢岡焼の作品や窯元
と言った内容を書いていきます。この記事を読めば楢岡焼の魅力がお分かり頂けると思いますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
楢岡焼とは
楢岡焼は、現在の秋田県に存在する焼物のなかで歴史が140年と最も古く、江戸末期から続いています。
楢岡焼が始まる以前は白元焼など他にもいくつかの窯元がありましたが、現在は全て絶えて無くなってしまいました。但し、1975年(昭和50年)に白岩焼が復興されています。
楢岡焼の歴史
楢岡焼公式通販オンラインストア
楢岡焼は、1863年(文久3年)に地元の名家であった小松清治が秋田の内陸にある山村で大杉瀬戸を創業したのが始まりと言われており、そこで秋田市の陶芸家たちを呼び寄せて窯を作らせました。
明治20年頃から明治35年頃までが大杉瀬戸の最盛期で、その後は、1908年(明治41年)に清治の三男である力蔵が交通の便利が良い現在地(高野)に窯を作り上げると、このころから楢岡焼と呼ばれるようになります。
1983年(昭和53年)には南外村の無形文化財に指定されています(現在は大仙市指定無形文化財)。
こうして戦中戦後や安価な土による陶芸の出現など、あらゆる危機から守り現在も伝統工芸として受け継がれています。
楢岡焼の変遷
楢岡焼は当初、大瓶などの大きな品物を作成し、それらを周辺の人々に提供してきました。時代と共に大きい作品から小さい作品へと移行していき、器や茶碗などの小さな食器が主流となっていきました。
時代の流れの中で作品に変化があっても、質素で美しく上品、そして使いやすさへのこだわりは昔と変わることはありません。
また、秋田新幹線、スーパーこまちのE6系のグリーン車は楢岡焼の青をイメージされており、まさに多くの人々の暮らしに深く関わっているのです。
楢岡焼の特徴
ここでは楢岡焼の特徴やこだわり等について詳しくみていきましょう。
地元の土を使う
焼き物の原材料は土です。そして焼き物の仕上がりには土が非常に大事な存在です。
現在はネットの普及や輸送の発達により、世界各地の土が安価で簡単に手に入るようになったため、多くの陶芸家や窯元は業者から土を仕入れるようになりました。
しかし、楢岡焼は今もなお、地元の土を使い続けています。なぜなら、地元の土を使うことで楢岡焼の伝統を守りたいからです。
楢岡焼で使用されている地元の土は乾燥してひびが入りやすかったり、焼くと変形したりと扱うのが非常に困難です。しかし、問題が発生するたびに様々なことを繰り返し試み、ようやく巧妙に扱えるようになったと言われています。
地元の土を活かした楢岡焼はシンプルでかつ深みがあり、使いやすさを突き詰めたかたちでもあるのです。
そのため、手間ひまをかけてでも地元の土を使い続けるというわけです。
乳青色が魅力の海鼠釉(なまこゆう)
楢岡焼の特徴は地元の土を使い続けている以外に、青色の釉薬にもあります。
楢岡焼に使われている釉薬は海鼠釉(なまこゆう)といい、その色が海の生物の海鼠(なまこ)の地肌に似ていることから、そのように呼ばれています。もともと中国から伝承された釉法だそうです。
釉薬の主原料は白土(はくど)。他では類を見ない美しく深みのある青色を出しているのが海鼠釉なのです。
楢岡焼は、創業当初はオリーブ色の茶碗などが多かったのですが、明治中期頃から海鼠釉の製品が多くなり現在まで続いています。
ただの青色でなく、神秘的な乳青色をしていて、まさに唯一無二と言っても過言ではないでしょう。
また、多めに塗られた釉薬が美しいつやを出し、楢岡焼の魅力の一つになっています。
現在では希少な登り窯
コストの掛からない電気やガス窯で焼かれることが多い昨今、楢岡焼は登り窯という窯を現在も使用しています。薪を使って火をおこし窯の中を1200度まで温度を上げて焼くため、仕上がりや手間にばらつぎが発生してしまいます。
登り窯は朝鮮から日本へ伝えられたと言われています。その後、日本各地の特徴を活かして改良されていったそうです。
その昔、焼き物は窯や窖窯(あながま)など薪を使って焼いていました。
薪を使用する窯の特徴は、
- 燃料が薪である
- 焼成が困難で仕上がりにばらつきがある
- 灰が降りかかる
- 大量の煙が発生する
などが挙げられますが、登り窯はさらに、
- 窯が大きい
- 焼成室が4部屋に分かれている
- 窯が斜面に作られている
といった特徴があります。登り窯がいかに高度な職人技が必要か分かりますよね。
近年、環境保護の概念から薪にする木の確保が困難になり、また窯から排出される煙などの問題や、比較的安価な設備が普及したことにより登り窯の数は減少しています。また、実際に登り窯を使用する回数も減ってきています。現在では多い所でも年1、2回だそうです。
しかし、扱うのが困難な登り窯で焼き上げた作品は個性的で風合いのある素晴らしいものが多いため、今でも登り窯を使い続ける窯元が存在するのも事実です。
「困難のあとに、思いがけず素晴らしい作品とめぐり会う。」、登り窯が使い続けられている理由ではないでしょうか。
楢岡焼の種類(作品)
昔は大ぶりの瓶などが多かったですが、現在ではコーヒーカップや小鉢等の小ぶりな食器が多いです。
乳青色の海鼠釉(なまこゆう)が有名ですが、他の色もあるようです。
- 海鼠釉(青色)
- 白マット釉(白色)
- 土味を活かした焼き締め(茶色)
一見、グレーっぽい色をした表面に、内側は海鼠釉(なまこゆう)の鮮やかな青が施されたマグカップやろくろ目と海鼠釉を上手く活かした湯呑など、伝統を守りながら独創的で斬新な作品もあります。
ふるさと納税の返礼品にもなっているので、節税対策しながら楢岡焼の湯呑みが貰えるのは嬉しいですね。
楢岡焼の窯元・作家
楢岡焼の窯元ですが以前は何件かあったようですが、今では楢岡陶苑さん1件だけのようです。
・有限会社 楢岡陶苑(秋田県大仙市)
http://www.naraokayaki.com/index.html
オンラインでも購入可能になっており、箸置きやブローチからマグカップやサラダ鉢など、いろいろあります。また、HPでは焼成の進捗状況などもチェックできるようになっています。
楢岡陶苑では、6代目が現在も楢岡焼の作品を焼き続けていらっしゃいます。
ブログやtwitterもされているので、興味のある方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。楢岡焼の歴史、特徴や作品についてご紹介いたしました。
最後にポイントをまとめておきましょう。
- 楢岡焼は140年も続いている秋田県の伝統工芸品
- 特徴は、地元の土、海鼠釉、登り窯を使う
- 現在は食器など小ぶりな作品が主流
- 現存する窯元は1件のみ
- 地元の土や登り窯の扱いは困難なため、職人技が物を言う
海鼠釉の乳青色は、鮮やかなのになぜか穏やかな気分にしてくれます。
シンプルで使い勝手がよく飽きのこない楢岡焼は、歴史が古く様々な困難を乗り越えて守り受け継がれているのですね。
どんな場所や場面にも馴染みそうなのでインテリアのオブジェにもなってくれそうです。そんな楢岡焼の製品を大事な人に贈り物にするのもいいかもしれませんね。きっと、喜ばれることでしょう。