金継ぎの強度は?普通に使える?割れた器の修理後の扱い方
食器のヒビや欠けた部分を、金粉と漆を使って芸術的に修復できる金継ぎ。
いまでは体験教室があったり、キットも販売されるなど、趣味として楽しむ人も増えてきました。
そんな人気の金継ぎですが、「使った時の強度が気になる」という人も多いのではないでしょうか?
金継ぎされたとはいえ、元は破損している器なだけに心配ですよね…
そこで、このページでは金継ぎした器は普通に使えるのか、どのように扱うかを紹介します。
金継ぎの強度は普通に使うなら問題ない
結論からいうと、金継ぎされた器でも、普通に食器として使う分には問題ありません。
また壊れてしまうのを恐れて飾る人もいますが、全然気にしないで使って大丈夫です。
むしろ、使うことで経年変化も楽しめるのが金継ぎですから、たくさん使う方がおすすめです。
金継ぎした箇所によっては注意が必要
お伝えした通り、ほとんどの器が強度については問題ありません。
ただし、破損箇所によっては金継ぎしただけでは強度が足りない場合もあります。
力の加わり方で強度は大きく変わる
修理箇所によっても強度は左右されます。
金継ぎした器は、料理を盛り付ける器としても問題なく使えますが、使うときに金継ぎを施した部分にどの程度の力がかかるかは重要です。
高温になったり、湿りやすかったりすると、金継ぎの強度は低くなってしまうので注意しましょう。
とくに気をつけるべきポイントが、マグカップや急須などの取っ手部分。細く力がかかる面積が狭いので、使っていると負荷がかかりやすく、金継ぎしても割れてしまう可能性があります。取っ手部分を金継ぎした食器は、あまり使わない方がよいでしょう。
およそ半年で硬化しさらに少しずつ硬化を続ける
金継ぎの材料として主に使われるのが漆です。この漆の特性上、塗ったあとに硬化させる時間が必要になります。
この硬化にかかる時間は湿度や温度によって変わりますが、およそ半年が目安。ただし、これは使ううえで十分な硬化であり、完全に硬化しているわけではありません。
半年を超えても漆は硬化して、50年経ってから完全に固まるとされています。50年とまではいかなくとも、完成までに最低半年は考えておいた方がよいでしょう。
瞬間接着剤やパテなら簡単に分解できる
金継ぎに使う漆は自然界の接着剤と呼ばれています。そのため、ホームセンターなどに売っている瞬間接着剤や石膏などのパテを使っても修理が可能です。
漆を使った金継ぎは、強度が高いところがメリットですが、その反面接着させたい破片がずれていてもやり直しができないという難点があります。
金継ぎをきれいに施すにはある程度慣れが必要です。そのため、初心者には瞬間接着剤や石膏などがおすすめ。漆よりも分解しやすいので、失敗してもやり直せます。
ただし、食器などの食べ物が直接触れるものの金継ぎをするときは、瞬間接着剤やパテが肌や食べ物に触れても問題ないものか確認しておきましょう。
そもそも漆とは?
和食器などでよく知られる漆ですが、金継ぎよりも塗料としてのイメージが強い人は少なくありません。
そもそもなぜ漆が金継ぎの素材として使われているのかを見ていきましょう。
漆は天然自然の樹液
漆とは、漆の木から分泌される樹液です。木に傷をつけて樹液が出てきても、黒く変色して固まる特性を持ち、天然の接着剤とも呼ばれます。
この漆は採取した直後だと木くずやゴミなどが入っているうえ、水分量も多い状態です。ろ過・攪拌の工程を経て、水分のない金継ぎに使いやすい漆に精製されます。
漆特有の質感と光沢は上品かつ高級感があり、漆器と呼ばれるお椀などの塗料としても使われていますが、古くから接着剤としても利用されていました。
漆を塗った部分は丈夫で、熱・酸・アルカリにも強いので、接着剤として非常に優秀です。
漆が固まるメカニズム
そもそもなぜ漆は固まるのかというと、その秘密は主成分であるウルシオールとラッカーゼという酵素に隠されています。
ラッカーゼは、空気中の水分に触れて酸化反応を起こすことでウルシオールが硬化。空気に触れればよいというものでもなく、湿度は75~85%、温度は20~30℃であることが条件です。
洗濯物を乾かすときは湿度が低いほうがよいですが、漆はその逆。空気中の水分にある酸素が必要なので、湿度が高いほうが乾きやすくなります。
金継ぎされたうつわの注意点
金継ぎ後のうつわは問題なく使えますが、使ううえで注意点があるので押さえておきましょう。
電子レンジや食洗機はNG
まず、電子レンジに金継ぎした食器などを入れて加熱してしまうと、火花が散って非常に危険です。熱に強いですがオーブンや直火も強度を損ねてしまうので避けましょう。
食洗機や乾燥機での洗浄も不可です。金継ぎに使った金の部分が剝がれてしまう可能性があります。
金継ぎした器は食器として使えるほどの強度はありますが、通常の食器よりもデリケートな状態なので基本的に加熱などの刺激は与えず、手洗いで丁寧に汚れを落としましょう。
器が湿っている環境は強度が落ちる
金継ぎを施すときはもちろん、硬化させたあとも器は乾いている状態にしておきましょう。
漆は湿度が高いほどに乾きやすい性質を持ちますが、それは空気中に含まれる水分に酸素が含まれているためです。
この酸素と漆内の酵素が化学反応を起こして硬化するので、水分が硬化させているわけではありません。
むしろ器が湿った状態だと強度が落ちる原因にもなるので注意しましょう。水気の多い料理への使用は避け、洗ったあとはふきんなどでしっかり水気を取っておくことが大切です。
金継ぎの強度に関するよくある質問
まだまだ知らない人も多い金継ぎ。「最近始めたばかりでわからないことばかり」という人も多いのではないでしょうか?
そこで、金継ぎの強度に関するよくある質問とその回答をご紹介します。
金継ぎされた器は安全ですか?
金継ぎに使われている漆は、和食器の表面に塗料としても使われており、固まれば口に入っても問題はありません。
ただし、漆以外の接着剤や石膏などを代用する場合は、食器に使えるか・口に入っても問題ないかを必ず確認しておきましょう。
金継ぎできないものってある?
陶器や陶磁器にも使えますが、直火を使ったり高温になったりする頻度が高い土鍋や急須、常に水気がついた状態になる花瓶などは金継ぎには向きません。
また、一部のプラスチックには漆が乾かないものもあるので注意しましょう。
ガラスや木製の器などもできないことはありませんが、それぞれ専用の漆が必要なうえ、きれいに仕上げるには高い技術が必要です。
まとめ
破損した器の傷を装飾として生まれ変わらせる金継ぎは、時間や手間がかかりますが、食器としてもインテリアとしても使える誇るべき日本の伝統的な技術です。
修理後は水気や電子レンジを避けるなどの、取扱いに注意が必要ですが、その分愛着がわきやすいでしょう。
漆に比べて強度は落ちますが、ホームセンターなどで気軽に購入できる瞬間接着剤でもできるので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
ただし、接着剤などの漆以外を使う場合は食器に使っても問題ないかを必ず確認しましょう。