金継ぎでは、器の割れた部分や欠けた部分を直す工程があります。金継ぎの種類によって使う道具は異なります。
本漆の金継ぎ | 錆漆、刻苧漆など |
本漆以外の金継ぎ | エポキシパテ、石膏など |
このページを読んでいるのは、金継ぎ用のパテを探している人だと思います。
結論から言いますと、食器として直すなら『金継ぎ用 エポキシパテ』しか選択肢はありません。
とは言っても、理由が気になると思います。なので、このページでは現在販売されているパテとの比較や、金継ぎとして使うための選び方について解説します。
金継ぎにおけるパテの役割
まずは、金継ぎでパテが必要になるのはどのような場面なのか解説します。
すべての器にパテが必要ではありませんので、よく確認してください。
欠けた部分の埋めやヒビの補正に使われる
金継ぎでは、欠けて破片がない部分の肉付けや、割れてすき間が空いた部分を埋めるためにパテを使用します。
割れた際に細かい破片を拾い切れず、接着しただけではヒビが残ることも多いです。そのため、パテによって不足した部分を補います。
それでは、具体的にどんな破損状態の際にパテが必要かを、写真と動画で紹介します。
割れているが、接着するとピッタリ合い、ヒビ目がわからない場合
割れた器を合わせてみて、ヒビ部分にへこみが見られない場合は、パテは必要ない可能性が高いです。
「可能性が高い」という曖昧な書き方をしている理由としては、接着後にパテが必要になることもあるからです。
上記のような場合にはパテが必要になります。
割れているが、接着するとピッタリ合い、ヒビ目がわからない場合
割れた器を合わせてみて、ヒビ部分に欠け(剥がれ)が見られる場合は、パテが必要です。
漆で塗り重ねることでへこみを埋めることも可能ではありますが、時間がかかってしまいます。少しの欠けでもパテを使用する方が作業自体は楽になります。
欠けている器の場合
欠けている場合は、パテが必要です。
欠けている器の他に、無くなってしまった部分を作ることもできます。
教室に来られる方でよくあるのは上記の器です。
下の画像は、徳利の口の部分が無くなってしまった物を直した例になります。
伝統技法の金継ぎでは『錆漆』を使う
冒頭でも紹介しましたが、本漆の金継ぎでは『錆漆』を使用して欠けやヒビの補修を行います。
室町時代に発祥したとされる金継ぎですが、もちろん室町時代にパテのような物はありません。ですので、生漆と砥の粉を混ぜて錆漆を作り、欠けやヒビ部分を埋めていました。
ただ、本漆ですから肌がかぶれる恐れもありますし、手で練ればいいだけのパテと違って調合が必要になりますから、錆漆の方がハードルが高いのは間違いありません。
金継ぎのパテの使い方
よく使われるエポキシパテは粘土のように使うことができます。教室では小学生のお子様も自分で直すくらい簡単に使えます。
エポキシパテの使い方について説明します。
写真でやり方を解説
ほとんどのエポキシパテが棒状になって販売されていますので、カッターで切って使います。
エポキシパテは練りこむことで硬化が始まります。ほとんどが2色になっていて、片方の色が硬化剤になっています。
(中には、2色が分かれて販売されているパテもあります)
素手で触っても問題はないですが、指サックや手袋を使用すると汚れ防止になります。
欠け部分やヒビ部分にエポキシパテをつけていきます。
エポキシパテは数分で固まりますので、固まる前に形を整えるのがコツです。
エポキシパテが硬化した後は、紙ヤスリや彫刻刀などで削って形を整えていきます。
動画でやり方を解説
実際の作業を動画にして公開しています。
簡易金継ぎに使うパテを選ぶポイント
簡易金継ぎに使うパテを自分で選ぶ場合、金継ぎに向いた商品かを確認しなければなりません。
注意したいポイントを紹介します。
食品衛生法に適合していること
金継ぎで直した後に食器として使いたいのであれば、食品衛生法に適合したパテであることが重要です。
金継ぎの本やインターネットで調べると、セメダインのエポキシパテがおすすめされています。ただ、セメダインの公式では飲食物が直接触れる部分への使用はしないようにアナウンスされています。
セメダイン公式サイト
エポキシパテの多くは食器への使用を前提としておらず、人体の内部に入ると有害な物質が含まれていることがあります。市販のエポキシパテのほとんどが食品衛生法の基準に適合してないことが、「パテで金継ぎするのは安全じゃない」と言われる理由の一つです。
ただ、個包装のお菓子などを盛る器や、置物に金継ぎするなど、食器以外に使うなら問題ありません。後ほど、比較表で食器に利用できないパテも紹介しますので、そちらも参考にしてください。
製造国が日本であること
食品衛生法は日本の厚生労働省が定めている基準になります。
ですが、食品衛生法適応の商品が日本で販売されているわけではありません。海外メーカーの物を日本に持ってきて、その後に食品衛生法を通している製品もあります。
もちろん、海外の物がすべて悪いわけではありませんが、口に触れる物ですから できるだけ安全なパテを使用するのがよいと、私は考えます。
実際、海外で製造していた商品が日本の基準値を超えていたり、検査を不正していた事件はあります。
また、問合せ窓口が日本のあることも、使用するうえで安心できるポイントだと思います。
陶磁器に使用できること
パテには陶磁器に使用できないものも存在します。
たとえば、木工用のパテのなかには陶磁器に埋めるとうまく接合できず、乾燥後にポロリと取れてしまう物もあります。
商品説明に使用できる材料が書かれていますので、購入前に確認しましょう。石材や金属に充填できる商品であれば、陶磁器にも使用できる物が多いです。
接着剤ではないこと
ホームセンターなどで購入する際に間違いやすいのですが、接着剤とパテは使用目的が異なります。エポキシパテとエポキシ接着剤があるので間違いやすいです。
売り場やメーカーが共通しているので迷う人も多いですが、『エポキシパテ』とパッケージに大きく書かれているのでそれを目印にしてみてください。
また、エポキシパテの多くはチューブではなく円柱型でケースに入って販売されていますので、見た目でも区別してみてください。
これからはじめる人なら金継ぎキットがおすすめ
ここまで金継ぎ用パテの選び方を紹介しましたが、これから金継ぎを始めてみようと考えている人にはキットを買うのもおすすめです。
必要な道具が一式揃っていますし、使い方も詳しく説明されているので安心です。
金継ぎ暮らしで販売しているキットなら、パテだけでなく、すべての材料が食品衛生法基準をクリアしているので、金継ぎした後も安心して食器として使用することができます。
金継ぎ用におすすめのパテ
選ぶポイントを紹介したところで、さっそく具体的な商品を紹介していきたいのですが、基準に合う商品は今のところ『金継ぎ用 エポキシパテ』しかありません。
メーカー・販売元 | 金継ぎ暮らし |
生産・原産国 | 日本 |
食器への使用 | |
硬化時間 | 10分 |
商品の特徴 | ・食品衛生法370号規格適合 ・日本水道協会JWWA K157規格適合 =ニオイや味への影響がない |
金継ぎ用エポキシパテは食品衛生法に適応しているのはもちろんですが、さらに国産品であり、かつ、食品が触れたりしてもニオイや味が変わらないという試験(日本水道協会JWWA K157規格)まで通っています。
ですので、パテを使って金継ぎをした後に食器として使用したいのであれば、上記の商品しか今のところ選択肢はないわけです。(2024年4月現在)
デメリットとしては、今のところホームセンターで販売はされていないことと、材料にこだわっているために値段が高いことです。
とりあえず試してみたい人向け4選
食器以外にパテを使用したい人もいると思いますので、簡単に手に入って使いやすい商品を4つ紹介します。
耐水エポキシパテ/ダイソー
メーカー・販売元 | ダイソー |
生産・原産国 | 台湾 |
食器への使用 | |
硬化時間 | 1分 |
商品の特徴 | ・耐水なので花瓶などに最適 ・手に入れやすい ・安い |
ダイソーで販売しているエポキシパテです。
耐水性ということで、花瓶やコップの取っ手などを直すにおすすめの商品です。エポキシパテがどんな物か試してみたい方には一番最適だと思います。
『金継ぎを100均の商品だけでやってみた』というページでは、実際にダイソーのエポキシパテを使用してみたレポートを掲載していますので参考にしてください。
エポキシパテ 金属用/セメダイン
メーカー・販売元 | セメダイン |
生産・原産国 | アメリカ |
食器への使用 | |
硬化時間 | 10分 |
商品の特徴 | ・有名なメーカー ・手に入れやすい ・使い方の説明サイトが多い |
セメダインで販売しているエポキシパテです。
有名なメーカーなので手に入るところが多いですし、使っている人も多いのでネットで調べれば使い方がすぐ出てくるのも安心して使えるポイントです。
硬化時間は10分以外に60分の長い物もありますので、細かい部分をパテ埋めする際におすすめです。
エポキシパテ/レクターシール
メーカー・販売元 | レクターシール |
生産・原産国 | アメリカ |
食器への使用 | |
硬化時間 | 15~20分 |
商品の特徴 | ・食品衛生法適応 ・耐水性 |
レクターシール社が製造しているアメリカ産のエポキシパテです。
数少ない食品衛生法適合の商品です。製造はアメリカなので、一応食器の修繕には使用できます。
硬化後は少し柔らかいので、金継ぎの下地としては使いづらいのがネックです。
ゴリラ エポキシパテ/KURE
メーカー・販売元 | The Gorilla Glue Company(国内の販売は呉工業株式会社が代理) |
生産・原産国 | アメリカ |
食器への使用 | |
硬化時間 | 5~10分 |
商品の特徴 | ・動画で使い方がわかりやすい ・手に入れやすい |
アメリカの接着剤メーカー、ゴリラのエポキシパテです。
硬度が高く、固まった後にドリルでネジを埋め込めるほど。動画もわかりやすいので使い方に迷うことはないと思います。
ホームセンターはもちろん、ドン・キホーテなどでも手に入れることができるのも魅力です。
金継ぎのパテに関する質問への回答
パテをつけただけの状態で使用することはできますか?
弊社の『金継ぎ用 エポキシパテ』でしたら食品衛生法適応ですから、表面に漆を塗ったりせずにご使用いただけます。
水にも熱にも強くなっておりますので、パテだけでしたら食洗機もご使用いただけるかと思います。
パテは用途に合ったものを選ぶことが大切
知らない人が多いですが、金継ぎ用にパテを使用するならば、食品衛生法に適合していることが非常に重要です。
最近は金継ぎが人気になっていることもあり、教室が増えていたり、キットが簡単に手に入るようになりました。ただ、教室講師も食品衛生法のことを知らなかったり、キットも食器に使用できない物が多いです。
金継ぎ暮らしでは この状況を変えたいと思い、安心安全な道具で金継ぎすることにこだわっています。『金継ぎ用 エポキシパテ』は自信をもって紹介したい商品となっていますので、金継ぎに使うためのパテを探している方は、ぜひ手に取っていただければ幸いです。
ありがたいことに、飲食店様や教室運営者様からの発注を多くいただいております。
もしよろしければ、弊社のホームページ上でご紹介させていただきたいので、ご連絡いただけますと幸いです。
お手数ですが、以下の問い合わせボタンよりご連絡をお願いいたします。